若者の就業

 スウェーデンから戻ってから2年半が経ち、色々なことを忘れかけているこの頃ですが、今僕がやっている仕事はまさにスウェーデンで見てきたことばかり。シェレフテオ市では産業振興部に在籍していたのですが、今の僕の仕事は某市の産業観光部。まさにそのまんまなのです。スウェーデンの自治体がやっている仕事をそのまま参考にして持ち込むというのは、制度の違いもあり簡単ではないのですが、シェレフテオで見てきたことには色々なヒントがあるし、そのスピリットを生かすというのが今の僕のライフワーク。

 そんな中、日本でもスウェーデンでも共通の課題の一つが「若者の雇用」。若者の失業率やニートと呼ばれる若者の問題も共通であるのです。シェレフテオでも、その問題解決を図るための政策がいくつもありますが、特に注目したいのがコレ。「UNGDOMSTRAINEE」(→リンク)とよばれる事業。直訳すれば「若者の実習生」とでも言えましょうか。簡単に言うと、職業訓練などの研修を受けながら、実習生として就業体験をするというもの。もちろん給料をもらいながらです。総労働時間を100とすると、75%は就業実習をして25%は研修を受けるというのです。

 日本でも職業訓練を受けながら生活費が支給される制度を国がやっていますが、これもとてもスウェーデン的な制度だなあと思いましたが、昨年から日本でも緊急雇用基金を使った事業で「地域人材育成事業」というのがあって、まさにこれがシェレフテオでも取り組んでいる事業と同じなのです。2009年と2010年で85人の若者がこのプログラムに参加し、市の仕事を実習として行うようです。仕事内容は経済分野や保健福祉分野が中心のようです。日本でもスウェーデンでも若者の就業意欲は、昔と比べたら低下しているようですし、今後人材が必要な分野で働く体験をしてスキルを身につけるというのは、とても重要なことだと思うのですよね。このリーフレットにも書いてあります。

「この事業はとても重要です。なぜならシェレフテオ市は未来の人材確保の必要性があり、地域社会の担い手として若者が必要なのです。」

いいフレーズだ・・・。

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スウェーデンの剣道家/Swedish Kendo Players

 生活に追われて時間がなかったり、ネタもなかったりでブログの方はだいぶサボってましたが、なんとかやってます(笑)。コメントいただいていた皆さま、レスもしなくて申し訳ありません。
 久しぶりにブログに載せるネタができました。実は、6月10~12日までの日程で、シェレフテオにある神武館道場(→リンク)から剣道家7人が秩父に来ていました。シェレフテオつながりで、3日間の滞在中、僕がアテンドをしていたのですが、なかなか面白い経験ができました。来日した7人のメンバーのうち、2人は現役のスウェーデン代表メンバー、3人は元代表経験者というキャリアを持つ人たちでした。
 秩父では、地元の3か所の剣道クラブで交流稽古をしたのですが、彼らも汗びっしょりになりながら子どもたちや先生方と稽古をしていました。スウェーデンの剣道のレベルというのは良く知らないのですが、一緒に稽古をした日本人の先生方によると、「外国人の剣道家というととかく腕力に頼った剣道をする人が多いなかで、スウェーデンの剣道は基礎がしっかりしていてなかなかのものだ」との評もありました。さすが、スウェーデン代表レベルとだけあって、強いのでしょう。体格が良いので、防具をつけるとすごみが増して、まさに見上げるようです。僕は剣道の経験ナシなので、通訳してといわれても剣道用語がわからなかったりして、苦労した場面も多々・・・。でも、柔道同様に剣道も用語はそのまま日本語なので、英語やスウェーデン語でなくても、剣道家どうしで理解できてしまうのですね。
 そうそう、NHKの首都圏ニュースでも放映されました。動画付きです。僕もちらっと映ってしまってます。どうぞご覧ください。
http://www.nhk.or.jp/saitama-news/20100611143150_01.html

 スウェーデン土産に彼らからヴェステルボッテンチーズをいただいてとても嬉しかったなぁ。あの味が懐かしいと最近思い出していたので、翌日から早速いただいています。
 それと、夜のパーティでは、「ヘーランゴー」(→リンク)を歌ってもらうようリクエストしました。スナップスの味よりも、この歌のメロディーの方が強く印象に残ってますねぇ。それにしても懐かしかった・・・。

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経済危機/Economic Crisis

 アメリカ発の金融危機の影響で、日本だけでなくスウェーデンも影響を受けているところですが、スウェーデンでは政府が緊急経済対策をまとめたようです(→リンク)。その内容というのも、雇用創出により失業者の就職を促進しようというもののようです。最重点の対策は、住宅のリフォームや改築の場合の税を減税しようというもの。これによって建設業界での雇用を創出しようとしているようです。これは日本でも検討されている住宅減税に通じるものがありますね。
 もうひとつは職業教育部門で、高等職業教育プログラムを整備し、雇用につなげようというものです。定員3000人のところを6000人に倍増させるというもの。しかも、25歳以上の人には安価でその教育を提供しようというものです。日本でもこのような提案があるものの、話題は定額給付金の問題ばかりであまり具体的には語られていませんよね。日本の2009年の派遣法問題を考えたら、長期的に見て定額給付金より建設的な政策じゃないでしょうか。職業教育の伝統を持つスウェーデンらしい政策でもあります。
 アメリカと違うのはボルボやサーブなど、不況の自動車業界の支援については一言も言及しなかったということです。実際には救済策について議論はされているようですが。
 もうひとつは、その影響が地方自治体にも及んでいるというニュース(→リンク)。日本と同様にスウェーデンの地方自治体では、金融危機の影響で税収減が予想されており緊縮財政を行う必要があり、全国の自治体で4500人の職が減ると地方職員労働組合が調査結果を発表したそうだ。スウェーデンの自治体は借金をするもの大変になるとのこと。計画していた公共工事を延期するケースもあり、建設業界の雇用にも影響してくるだろうとのこと。このような状況は日本とほとんど一緒ですね。

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ビッグフレームinシェレフテオ/Big Frame in Skellefteå

 シェレフテオ在住のDr.越後屋さんから情報をいただいたのですが、シェレフテオにあるキャンパスエリアに日本のビッグフレーム構法による木造建物が建つというのです。11月11日付のノラ・ヴェステルボッテン紙で報じられているのですが(→リンク)、学生会館として使われていた築70年のスウェーデン式木造建物が取り壊され、その後には日本生まれのビッグフレーム構法という大断面集成材を使った木造建物が着工され、2009年の秋には完成するというのです。これは越後屋さんの所属するS友林業が開発したもので、ヨーロッパで初めてこの構法の建物がシェレフテオで作られるのです。ビッグフレームについてはこちら(→リンク)を参照していただくとして、日本の技術がEU圏の基準をクリアしてスウェーデンに輸出されるというのは画期的です。この記事の中段には、「これはシェレフテオの友好都市である秩父とのコラボレーションの成果である」と書かれています。この構法の資材加工は秩父市内の製材会社でも行われているのです。直接的にはシェレフテオと秩父市のコラボではありませんが、シェレフテオと日本とのつながりの中のひとつの成果であることは間違いないでしょう。
 取り壊されたこのファールンレッドの建物の前を毎日のように通っていたので、あそこに建つのかと思うと感慨深いものがあります。建物内の部屋には日本の茶室を模した部屋や日本式の引き戸も使われるとかで、完成した暁にはぜひ訪れてみたいです。その建物が数十年いや百年近く使われるのかと思うと、かなりロマンに満ちてますね。越後屋さんおめでとうございます。この英断に貢献したイエンス議員に拍手ですね。

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ケア付き住宅/Housing with care service

 先日の新聞に、国土交通省が高齢者用住宅の建設に力を入れるというニュースが載っていた。「ケア付き住宅」などの建設に補助金を出すなどして、年1万戸ずつ増やす計画なのだという。最近、読売新聞は医療や介護についての提言を発表したのだが、その中にもケア付き住宅を10年間で倍増させるという提言があった。このように、ケア付き住宅という言葉を最近よく目にするようになった気がする。読売新聞によると、ケア付き住宅の定義は、「明確な定義はないが、介護の担当職員が常駐していたり、食事や見守りのサービスを受けたりすることができる高齢者専用住宅を指す。北欧では1980年代以降、介護施設も、居住性を重視したケア付き住宅として整備している。」だそうだ。北欧から遅れること20年、日本でもポピュラーな様式になるのだろうか。
 そういえば、シェレフテオ市の高齢者福祉の担当者と話したときも、今一番の問題は高齢者用の住宅の不足なんだと言っていた。スウェーデンでは、1階部分にホームヘルバーや看護師が常駐するスペースがあって、2階以上が賃貸住宅のような形式の施設がポピュラーだ。そのような施設への入居を待つ人たちも結構多かったのである。まだ日本ではそれほど多くないが、きっと将来的にはこういうタイプの住宅の需要が高くなるんだろうなあと感じたものだ。
 日本で介護付きの有料老人ホームに入ろうとすると、入所時に数百万円の費用がかかるのだという。スウェーデンのケア付き住宅は通常はアパートの賃貸借契約と同じなので、そんなに費用がかかるわけではないのだ。ケア付き住宅のコンセプトは、きっと日本でも受け入れられるはずである。
 話は逸れるが、それらの施設にはレストラン(食堂)も併設してあって、入居者はもちろんのこと、入居者以外の高齢者も有料で食事ができるのだと言っていた。ちなみに、シェレフテオの場合だと1人前45クローナ(約700円)と、スウェーデンにしては割安価格だった。普通お昼を外食すると、65~75クローナくらいが相場だったと思うので、結構お得みたいだ。もうひとつ面白いのは、高齢者が小中学校の食堂に行けば、1食40クローナ(約600円強)で給食が食べられるという制度もある。さすがにこれは日本では聞いたことがないです。でもこれ結構面白い。子供が減って学校のスペースに余裕があれば、面白いんじゃないかな。

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民か官か/Private or Public?

 日本に戻ってから再認識するようになったのは、日本人は「民は良くて官はダメ」みたいな意識が非常に強いなあと。お役所のイメージが「働かない」というのは、万国共通みたいですが、スウェーデンでの官のイメージは日本での官のイメージよりずっといい気がします。投票率が80%の国で、マスコミやオンブズマンのチェックが機能しているから官への信頼もあるのでしょうが、日本ではマスコミが官を叩けば国民は興味を持って見る割に、選挙とか政治に参加する人は思うように増えない。
 民はどうしても利益で動く部分があるし、どんな人に対しても公平かっていうとそうではないし、民だけでは社会に偏りができちゃうと思うんですよ。とくに田舎は。またそれが悪循環で、いろんな事が不便になる。都会では官がサービスを提供しなくても、民間の企業がやってくれる部分も、利益が見込めない田舎では、企業さえ参入してこない。医療にしても、福祉にしても、商業にしても、みんなその延長線上っていう気がします。
 市民病院の廃止をテーマにしたドラマもあったようですけど、医療はとくにそうじゃないかなあ。もっと上の組織が全体を公平に見て、ある程度田舎にも配置しなくちゃ、田舎の街には医者も来ないし厳しいですよ。その点、スウェーデンのランスティング(広域自治体)は参考になると思いますよ。コミューン(市)の介護サービスにしたって、民営化を渋っているのはそれなりの理由があるし、アメリカ人やイギリス人や日本人が考えると、役所の仕事から切り離して民営化しちゃえばって考えが真っ先に出ると思うのだけれども、彼らはそうじゃない。彼らなりの持論があるし、それが間違っているという気もしないのです。
 もうひとつ。日本では、ボランティアやNPOは、役所では手が回らないパブリックな仕事もやってますが、経費節減の手段という側面もあると思うんですよ。スウェーデン人の考えを聞くとそうじゃない。ボランティアやNPOの無報酬・低報酬で責任のある仕事ができるの?って考える人が多い気がします。それはあくまで補完的なもので、本筋はきちんとした報酬をもらってやる官や民だろうと。正規職員が増えることで、雇用が増えて、消費も増え、税収も増えて循環している、そんな感じがするのです。
 スウェーデン人が考えるパブリックの境界線は僕らとは違うのかもしれないけど、それが僕にとっては新鮮な目線なんですよ。都会と田舎じゃ、官も違っていいのですよね。

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人事制度(2)/Personnel system vol.2

 以前にも紹介した日本とスウェーデンの役所での人事制度の違い(→リンク)。市議や職員の人と会うたびにこの話をするのですが、やっぱりスウェーデン人には理解してもらえないようです。僕らにとっては当たり前のことのようになっているジョブローテーションについては、こちらの人はかなり懐疑的な見方をしますね。悔しいですけど、鼻で笑うような素振りを見せられることもあります。教育制度もそうでしたが、やはり専門性というのがこちらの人の考え方なんでしょう。
 今回は「高見さんに聞く」の第3弾なのですが、高見さんがスウェーデンと日本の役所を両方見てきて、やはり人事制度の違いはかなり大きな問題だとおっしゃっていました。特に高見さんは環境部門の職員と接することが多いのですが、日本の役所の環境担当者は3~4年ですぐに変わってしまうので、せっかく知識が付いてきたころに違う部門に異動になってしまうのだそうです。それに比べ、スウェーデンの役所では長期に渡り担当者が変わらないので、長期的な視野に立った仕事が可能だと話していました。それと、スウェーデンの環境担当者も変わることがあるのですが、それは役所から民間に行ったり、違う役所から来たりだとか、組織は違っても専門分野が同じことが多いのだそうです。スウェーデンの場合、人事部局から辞令が出たから異動するというよりも、その仕事に飽きたら役所以外の他の組織に職を求めるのではないかとおっしゃってました。なので、その担当にいる人は好きでその仕事をしているので、かなりモチベーションの高い人が多いのだとか。
 しかし、日本人の特質なのか、新しい担当が来ても真面目に勉強して2~3年経つとかなり深い知識を持つようになり、いい仕事ができるようになるそうです。しかし、すぐまた異動してしまうんだと嘆いていました。
 ゼネラリストとスペシャリストの組み合わせでどちらが組織として効率がいいかという研究もあるようですが、そのバランスは難しいですよね。スペシャリストばかりの集団がかならずしも効率的かというと、そうでもないでしょう。しかし、自分が望んだ仕事をしたほうがモチベーションも高くなり、組織全体や顧客(住民)に対する最適度は高いのかなあと感じますね。いくら仕事とはいえ、いやいややるのより、自らやりたいことの方が能率が良いはずですもん。もう少し長いスパンでのローテーションと、本人の希望が通りやすい仕組みは必要かもしれませんね。
 まあ、ここでも長短両面がありますが、日本の役所でジョブローテーションがあってもスウェーデンと変わらず(場合によっては少ない人数で)回っているのは、やっぱり組織力の差ですよ。バックアップ体制、OJT、情報共有、事務の標準化・・・この辺が日本の強さかなあ、と感じます。

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ペダゴギック/Pedagogik

 また教育の話を少し。こちらの教育関係の人と話をしているときによく聞く単語があります。それは「ペダゴギック(Pedagogik)」という言葉。初めて聞いた言葉だったのでウィキペディアで調べてみると、日本語にあえて訳すとすれば「教授法」、つまり「教える技術」なのだそうです。
 スウェーデンの教育の中での問題点はいくつかあるのですが、その1つが教師の教え方の技術や、教師の質が一定ではないことなんだそうです。つまり、担当の先生の当たり外れが大きいのだそうです。教師の得意分野の違いもあるのでしょうが、良い先生に当たると熱心に教えてもらえますが、その逆だと問題集みたいのをひたすら解かされるだけであまり教えてもらえないこともあるのだとか。確かに、僕もSFIの授業の中で同じような体験をしました。ある先生はよく教えてくれるのだけれども、別の先生は練習問題を配って、わからないことは質問してねというだけで、生徒一同が「?」な状態なわけです。何のために授業に参加しているのかわからなかったりして。
 実は日本とスウェーデンの両方で教師経験があるという日本人の方の記事がインターネットに載っていたので、直接その方に電話してスウェーデンと日本の教育の違いを教えてもらいました。その方はスウェーデンの教育大学の卒業論文で、スウェーデンと日本の数学教育の違いなどを書いたところ、それが注目されて賞を受賞したそうです。その方に伺ったところ、数学の教育レベルは日本の方がはるかに高いのだというのです。日本人の小中学生がスウェーデン引っ越してきて、言葉がある程度わかるようになると、数学ではいい成績をとれることが多いのだとか。スウェーデンでは九九だとか図形だとかの基本的な数学な知識が、日本に比べて高くないそうです。ただスウェーデンで優れているのは、林業高校の話でも紹介したとおり、実際の生活に沿った問題解決法を身に付けているので、いろいろ工夫した解き方でなんとか問題を解いてしまうのだとか。日本の数学は高度だけれども、実際の生活とはかけ離れたものになってしまっているともおっしゃってました。その辺りがスウェーデンと日本の教育でお互いに学び合えるところじゃないかとも話していました。これは、シェレフテオの教育関係者の人が話していたこと、僕が感じたところとかなり一致した感想だったので、興味深かったですね。
 それから、前にも日本の授業研究の話を書いたのですけれども(→リンク)、日本流ってのは護送船団だの金太郎飴だの言われていますが、先生の質に偏りが少ないことかもしれませんね。学校の現場だけではなく、他の職場にも言えることなんでしょうが、職場内での情報共有やOJTとかは日本の方が進んでいる気がしますよ。多様性や個性を尊重するスウェーデンとは少しアプローチが違うのかもしれません。それと、スウェーデンの先生は受け持つ授業数が多いらしく、授業の準備や他の先生と意見交換をする機会もあまりないのだそうです。少人数学級の弊害でもあるのかな?スウェーデンの学級ごとの生徒数は20~30人くらいが平均的だそうですが、日本では30人~40人くらいですもんね。でも、生徒数が多くても日本の学校で教える方がやりやすいそうですよ。やっぱり学校の規律とかは日本の方が厳しいので、授業を進め易いのだとか。あとは、スウェーデンの先生は中学校でも2科目以上教えるのが普通なんだそうです。科目ごとに別の先生に習うより、なるべく同じ先生が生徒に接したほうが良いと考えられているのだとか。文化や国民性の違いもありますが、どちらにも長短あるのでしょう。考え方の違いってのは、本当に面白いものです。

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林業高校/Naturbruksgymnasiet

 シェレフテオの基礎学校(小中学校)を訪問したりして、日本とスウェーデンで教育についての考え方の違いというのを感じますが、両国の学校で最も違うのは高校かもしれません。というのも、日本の高校でも特色を持った学校が増えてはいますが、スウェーデンの高校の学校ごとの特色は日本とは比較にならないでしょう。日本の方が普通科の割合がかなり高い気がしますね。以前よりは偏差値だとか進学率ランキングというのも意味合いが変わっているのかもしれませんが、日本には依然としてそのような側面が残っていますよね。スウェーデンで高校を選ぶときには、偏差値とかそういう尺度ではなくて、学校の特色(選択コース)で選んでいるようです。
 例えばシェレフテオの場合には、4つの市立高校と2つの私立高校があるのですが(→リンク)、それぞれの高校に特色があります。ある高校は芸術に特化していたり、ある高校は工業や建築、看護や介護、経営やIT、科学に特化していたりします。将来の進路に合った高校に進学するのだそうです。日本で言うと実業高校や専門学校に近いイメージですね。
 今回はシェレフテオの市立高校のナチュールブルークス高校(農林業)にお邪魔する機会がありました(→リンク)。この高校の教育内容は、林業、狩り、馬、漁業などのコースがあります。林業は伐採や森林経営などの教育を、馬のコースは馬の世話や乗馬などの教育を、狩りと漁業のコースは狩猟と釣りなどを行うのだそうです。この高校の林業コース3年生のイエンス君と担当の先生の案内で、林業教育の内容を見せてもらいました。
 林業コースの生徒数は1学年15~20人程度とそれほど多くないのですが、卒業生の就職状況は良好で、卒業前に地元の林業関係企業に就職がすべて決まるそうです。数人は大学の林業課程に進むそうですが、企業からの求人は引く手あまたの状況なのだそうです。なにしろ、スウェーデンの林業は機械化が高度に進んでいて、伐採や運搬などもハイテク機械を使って行っているので、高校の課程でも林業機械の操作をシミュレーターや本物の機械を使って徹底的にマスターさせるのだとか。実際にシミュレーターも体験させてもらいました。林業機械には伐採を行うハーベスター(→製品例)と、運搬をおこなうフォワーダー(→製品例)の2種類が主にあるのですが、操作はかなり難しいです。シミュレーターは1台3千万円近くするという高価なもの。ゲームセンターにあるゲーム機のもっとリアルなものです。2つのハンドルと数々のボタンを使い分け、伐採や運搬の練習を行っています。特にハーベスターという機械は高度な操作技術を要求されるようで、1つのボタンに8つの機能があり、そのボタンが8種類ほどあるので、限りない組み合わせの3次元的操作が可能なのです。ヘリコプターの操縦と同じくらい難しいのだとか。
 そのほかにもこの高校の特色としてはエーカと呼ばれる教育方法を数年前から取り入れているのだとのこと。どんな教育方法かというと、普通に生徒が机に座って先生の授業を聞くのではなく、5・6人ごとのグループを編成してミッションとよばれる実践的な課題を与えられ、1~2週間かけてグループで解決していくのだそうです。ミッションと呼ばれる課題も例えば、親戚の林家に森林経営についてのアドバイスを頼まれ、より効率的な森林経営や損益についてアドバイスしたり、アメリカの企業から経営参加の申し出があってそれに対応していくだとか、なにしろ具体的な課題なのです。生徒たちは先生にアドバイスを求めたり、本やインターネットで調べたりしながら解決方法を探っていくのだとか。課題を解決する過程で、森林管理や経営の知識、数学や英語の知識を総合的に使っていくのです。先生も教えるというよりは、問題解決に向けたアドバイスをすることを中心に指導していくのだとか。まさに問題解決手法の練習ですね。ただし、この教育法も長短があり、非常に優れている部分もありますが、通常の教育方法に比べて劣っている部分もあるのだとかで、試行錯誤が続いているそうです。しかし、生徒達には好評のようです。実践に即しているので面白いし、受身ではない教育が受けられるのだそうですしね。
 実際に目にしてみると、教育方法には色々あるんだなあと考えさせらた体験でした。(写真は1枚目が校舎、2枚目が給食風景、3枚目がハーベスターのシミュレーター、4枚目がフォワーダーのシミュレーターです。プレステじゃありませんよ。)
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住宅 or 施設?/Housing or Facility?

 福祉の話をまた少し。先日、シェレフテオの福祉施設を見せてもらう機会がありました。施設という呼び方が適切かどうがわからないのですけど・・・。というのも、スウェーデンの福祉施設を見て感じるのが、日本とは少し思想が違うなあと思うのです。日本でいう指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)や介護老人保健施設などの「介護保険施設」と呼ばれる施設は、スウェーデンのカテゴリーでいうと「Särsilt boende(特別住宅)」という呼ばれ方をするのです。その中には、要介護度が高い人が入居する所やグループホームみたいな所も含まれるのですが、「社会サービス法」の下では日本のように細かいカテゴリーに分けた呼び名は存在せず、すべて「特別住宅」と呼ばれているようです。ただし、現場や一般の人は「äldre boende(高齢者住宅)」と呼んでいるようですが。ちなみに、シェレフテオ市内に特別住宅は950戸(「室」でも「床」でもない「戸」です)があります(→リンク)。これでも不足気味で増設中なんだとか。
 中に入ってみて思うのが、これらの施設の中で暮らす高齢者の要介護度がまちまちだということ。日本の特養に入る位の要介護度の人もいるし、あまり重度でない人もいるし、本当にまちまちのような気がします。施設内の部屋は当然バリアフリー仕様になっていますが、間取りは1DK~3DKくらいの普通のアパートと同様でそこに単身高齢者や高齢者夫婦が住んでいて、「施設」と呼ぶよりは「住宅」と呼ぶのがふさわしいのです。「施設」と「住宅」の違いは、名前だけの差ではなく、高齢者福祉に対する思想の差なのかもしれないです。日本の特養は僕の個人的なイメージの中では、ちょっと「病室」に近いイメージがあるのですが、スウェーデンでは普通の住宅と同じ感じで、かなり重度な人もそういう中で暮らしています。
 以前にサービスハウスについて書きましたが(→リンク)、実はこれも特別住宅の1種で、要介護認定がないと入居できない施設なんだそうです。しかし、サービスハウスという呼び名自体は現在は正式にはないのだそうで(かつての呼び名)、便宜上そう呼んでいるだけのようなことを聞きました。特別住宅はどこも似たようなもので、介護スタッフが建物内に24時間常駐しています。看護師がいる看護ステーションも完備しています。それから共同の食堂、フットボードと呼ばれる足のケアをする設備があったりします。このようにスウェーデンの高齢者施設は「住居」+「介護・看護etc.」という組み合わせの、あくまで「特別な形の住居」であって「施設」と呼ぶのにはばかられるものなのですね。
 それと、要介護認定がない55歳以上の高齢者用の住居もあって、こちらは「Senior boende(高齢者住宅)」と呼ばれています。「特別住宅」も「高齢者住宅」も、シェレフテオでは公益住宅公社(Skebo→リンク)が建設・管理していて民間の施設は存在しないのですが、スウェーデンで高齢者用住宅のハード整備のレベルが高いのは、この公益住宅公社の役割も非常に大きいのかもしれないですね。(下の写真は、1枚目が特別住宅の外観、2枚目が足のケアをするフットボード、3枚目は入居者の食事風景です。この施設は重度の方も何人も見受けられました。)
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