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民か官か/Private or Public?

 日本に戻ってから再認識するようになったのは、日本人は「民は良くて官はダメ」みたいな意識が非常に強いなあと。お役所のイメージが「働かない」というのは、万国共通みたいですが、スウェーデンでの官のイメージは日本での官のイメージよりずっといい気がします。投票率が80%の国で、マスコミやオンブズマンのチェックが機能しているから官への信頼もあるのでしょうが、日本ではマスコミが官を叩けば国民は興味を持って見る割に、選挙とか政治に参加する人は思うように増えない。
 民はどうしても利益で動く部分があるし、どんな人に対しても公平かっていうとそうではないし、民だけでは社会に偏りができちゃうと思うんですよ。とくに田舎は。またそれが悪循環で、いろんな事が不便になる。都会では官がサービスを提供しなくても、民間の企業がやってくれる部分も、利益が見込めない田舎では、企業さえ参入してこない。医療にしても、福祉にしても、商業にしても、みんなその延長線上っていう気がします。
 市民病院の廃止をテーマにしたドラマもあったようですけど、医療はとくにそうじゃないかなあ。もっと上の組織が全体を公平に見て、ある程度田舎にも配置しなくちゃ、田舎の街には医者も来ないし厳しいですよ。その点、スウェーデンのランスティング(広域自治体)は参考になると思いますよ。コミューン(市)の介護サービスにしたって、民営化を渋っているのはそれなりの理由があるし、アメリカ人やイギリス人や日本人が考えると、役所の仕事から切り離して民営化しちゃえばって考えが真っ先に出ると思うのだけれども、彼らはそうじゃない。彼らなりの持論があるし、それが間違っているという気もしないのです。
 もうひとつ。日本では、ボランティアやNPOは、役所では手が回らないパブリックな仕事もやってますが、経費節減の手段という側面もあると思うんですよ。スウェーデン人の考えを聞くとそうじゃない。ボランティアやNPOの無報酬・低報酬で責任のある仕事ができるの?って考える人が多い気がします。それはあくまで補完的なもので、本筋はきちんとした報酬をもらってやる官や民だろうと。正規職員が増えることで、雇用が増えて、消費も増え、税収も増えて循環している、そんな感じがするのです。
 スウェーデン人が考えるパブリックの境界線は僕らとは違うのかもしれないけど、それが僕にとっては新鮮な目線なんですよ。都会と田舎じゃ、官も違っていいのですよね。

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コメント

Hej, Kinta san!
お久しぶりです!
この間ちょっとした事故が起きまして、まさにこのランスティングが管轄する、スウェーデンの一元的医療の現場を体験するチャンスに恵まれました。といっても直接体験したのは訪問中の老母(82歳)で、私はその付き添いとしてでしたが。
8月21日、散歩中にひょんなことでしりもちをついてしまい、アーやった!!という感じで大腿骨骨頭をすっぱり骨折してしまったのですが、車でシェレフテオ病院(lasarettet)の救急外来に担ぎ込んだ途端、あっという間に入院手術の手はずが踏まれ、レントゲンで骨折を確認するや否や、病室をあてがわれ、翌日人工関節の手術が施され、その翌日から歩行リハビリが始まり、必要な補助具が貸与され、合併症(静脈血栓)予防の皮下注射を自分で打つ訓練を受け、7泊8日でそろそろと歩いて退院してきました。今では毎日2km杖を持って(使わず)散歩しています。老人につきものの怪我とはいえ、あまりの手際のよさに完全に脱帽です。
日本の治療状況を少しネットで見てみましたが、ひどい例では、骨折から手術まで平均21日間、歩行開始まで46日間、退院まで92日間という病院もありました。都立の老人医療センターでも、退院までのプログラムが30日間です。日本では、病院や住んでいる地域によって、受けられる治療内容に格差があり、「よい」又は最新の医療を選ぶのは個人の責任で、そのゆとりがなければ、なかなか満足のいく治療を受けられないのが現状ではないでしょうか。スウェーデンでは、選ぶ自由(選択肢)はあまり/ほとんどないわけで、場合によっては順番待ちを余儀なくされたりもしますが、原則は、住んでいる地域や個人の経済条件に関わらず、一定レベルの医療が保証されていることで、その原則がかなり貫徹されていることは、母の体験から実証できたと思います(緊急外来や手術で一切待たずに済んだのは運がよかったですが)。そして受けた治療も、最新技術レベルに属しているだろうと推測されます。社会的費用の効率的利用というのか、一時も早い機能回復を最重点においた医療だと思いました。日本でも、骨折を契機に認知症状が出たり寝たきりになることを防がなくてはいけない、という議論はずいぶんされていますが、なかなかそういう状況を国民的に克服できるところまでいってないのではないでしょうか。最新技術をルーティン化して、効率的に、そして誰にでも公平に提供するスウェーデンの医療体制は、やっぱり非常に優れていると思わざるを得ません。
ちなみに、母は単なる旅行者で、全く医療保険の対象外ですが、治療を受けるに際して、デポジットのようなものは一切要求されませんでしたし、抜糸など地域担当の看護婦が行う医療行為は無料の原則も適用されました。手術を含む入院治療費は、約91千クローナ(160万円位)でしたが、これまた運良く出発前にかけた旅行保険で全額カヴァーされました。
ということで、もちろん事故が起きないに越したことはありませんが、起きてしまった中では、とてもラッキーに快調に対処できて、私も母や父もスウェーデン医療体制やその他の幸運に感謝しています。(両親は、まもなく当初の予定通り帰宅します。)

投稿: Blåttbarn | 2008年9月24日 (水) 09時22分

Blåttbarnさん

ご無沙汰している間に、大変なことがあったのですね。存じ上げませんでした。でも、無事退院して快方に向かわれているようで何よりです。

スウェーデンの医療は最先端レベルという話は聞いていますが、医療関係の順番待ちはかなりすごいと聞きましたが、救急の場合には素晴らしい対応をしてくれるのですね。

日本の田舎で同じようなことが起こったら、救急車で地方の中核病院に搬送、そこで手に負えなければ、救急車に乗って転移搬送、たいていは公立の大きな病院や、私立の大学病院とかに運ばれるのでしょうか。そこで入院して、よっぽどの急患でない限りは手術の順番待ちになるのでしょうか。

それにしても保険は入っておくものですね。その金額の治療費を聞いたらびっくりしますもんね。

どうぞ無事に日本までお帰りください。

投稿: kinta | 2008年9月25日 (木) 01時36分

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