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家族観(その1)/Family values vol.1

 スウェーデンで生活をしていて日本と違うなあと思うことに、家族観の違いがあります。特に結婚観についてはかなり違いますね。もし街角で知人に出くわして、その人がパートナーを連れていたとしても「奥さんですか?」とか「ご主人ですか?」とは聞くのは少し気が引けます。仮にそう尋ねたとして、返ってくる答えととしてはpojkvän(彼氏)、flickvän(彼女)、man(夫)、fru(妻)のパターンのほかに、sambo(サムボ)というのがあります。というのも、スウェーデンには「サムボ」という事実婚制度があり、実際に約9割がサムボを経てから法律上の結婚に至るというというくらいです(→リンク)。ちなみにサムボという言葉は、スウェーデン語で「サム」=一緒、「ボ」=住むというような意味で、日本語に置き換えるとすれば「同棲」という言葉が適切なのでしょう。
 典型的なケースを挙げるとこんな感じです。男女が出会って恋愛関係になり一緒に暮らしたいという意思を持ったときに、たいていは住民登録だけ同じ住所にしてから同棲生活を始めるようです。その後、子どもを設けたりして何年か経ってから役所に婚姻届を出して正式に籍を入れるというパターンが多いようです。したがって、法律婚の前に生まれる子どもも当然多いわけで、婚外子の割合というのが非常に高いのです。このデータ(→リンク)を見るとあまりにも日本の状況と違うのにびっくりします。婚外子といっても法律の下で婚内子と同等の権利が保障されているだけでなく、円満なカップルの下で暮らす子どもが多いですし、社会的にもそのような慣習が十分に認知されています。もっとも重要なのは、1987年に成立した「サムボ法」では、サムボのカップルが離別した場合でも、住居や家財の財産分与制度が女性や子どもに十分に配慮された制度になっているため、婚姻届を出すという行為が日本のように重要視されていないのです。(→サムボ法の日本語訳
 このように事実婚が一般的になったきっかけというのは、意外なことにも税制との関連があるようなのです。「黄金の60年代」と呼ばれる1960年代には、スウェーデンは日本と同様に高度経済成長を経験しました。その過程で、女性の就業率が高まり、夫婦共働きが急増したのですが、当時の税制が夫婦合算課税方式を採っていたため、節税のために法律婚をしないカップルが増えたというのです。それを見ていた若者たちが、法律に基づかない結婚も選択肢として考えるようになり、税制が改正された後にも事実婚の形態は残ったというのです。
 婚外子の割合と出生率の間にはある程度の比例関係があることから、少子化対策のツールとして、日本でもこのような制度を取り入れるよう提案する意見も見かけます。良し悪しは別として、今の日本人の価値観を見る限り、時間をかけて深い議論をする必要があるでしょうね。他にもスウェーデンには「パートナーシップ法」というのがあり、同性カップルに対しても結婚に準じた制度が用意されています。このような風潮は、スウェーデンに限らず他の欧米の国々にもあるようですね(→参考リンク)。また、スウェーデン語のクラスメートにアフリカ出身の人がいるのですが、彼には3人の法律上の妻と10人の子どもがいるというのです。こういう話を聞くと、世界の価値観って本当に色々あるんだなあと感じますねぇ。

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コメント

スウェーデンではさまざまなカップルや家族に対応した法律が存在しているのですね。
同性カップルは、サムボ法かパートナーシップ法のどちらかを選べるようになっているんですね。どう違うのでしょうか。どちらも権利が保障されているので、締結するのに迷ってしまいませんか?
(的外れなことをお聞きしているかも知れません。すみません。)

投稿: maro | 2007年12月12日 (水) 14時00分

maroさま

コメントをありがとうございました。

以前は同性カップルにはホモセクシュアルサムボ法というのがあって、異性カップのサンボ法とは分かれていたのですが、2003年に統合され異性・同性にかかわらず同じ「サムボ法」が適用されるようになったそうです。

「パートナーシップ法=法律婚に準ずる」ものという感じでしょうから、その違いは主に財産分与に関するものでしょうね。サムボですと財産分与の対象は住居と家財が中心で、預金とかはすべて分与の対象になるわけではないのです。正式な法律婚(パートナーシップ法による届出)ですと、分与する範囲も広くなります。やはりそういう意味では、サムボの方が権利としては弱いんですよね。その辺が違いでしょうか。

スウェーデン人がサムボから法律婚へ移行する際の心境の変化というのはどのようなことがきっかけなのか、実は僕も興味があるところなのです。最初から法律婚というのは、あまり聞いたことがないので・・・。

では。

投稿: kinta | 2007年12月12日 (水) 14時44分

丁寧なお返事をありがとうございました。とても参考になりました(^^)
日本でも事実婚カップルに対しての保護はあるものの、適用されるのは異性カップルのみという話を聞いたことがあります。スウェーデンとは違って、性について固着した風潮があるのですね。

投稿: maro | 2007年12月12日 (水) 15時24分

色々な意味で日本人の考え方の方が、スウェーデンよりも保守的な気がしますね。警察官の採用に当たっても、社会にいる人と同じように同性愛者も必要なんだというエピソードを、スウェーデン語の先生が話していました。多様性を認めて個人を尊重する意識が高いのでしょうか。

投稿: kinta | 2007年12月13日 (木) 04時24分

「性」に対しての偏見がないのですね。
スウェーデンでは夫婦が同姓か別姓か選ぶことができると聞いたのですが、これは身分登録が個人単位だからこそできるのでしょうか。日本に住んでいると、家族単位の戸籍しか思い浮かばず、「夫婦別姓は同姓か選べる」というのはなかなかピンと来ないんです。

投稿: maro | 2007年12月18日 (火) 23時13分

maroさま

こんにちは。

そうですね。いつも感じているのは、スウェーデンでは性での格差は日本に比べるとずっと少ないです。でも、スウェーデン人に言わせると、まだまだ女性の地位が低い(特に給料などで)と言います。目指している次元が違うのかもしれませんね。

夫婦別姓の話、僕も詳しくなかったのでスウェーデン人に聞いてみました。日本人の具体例で書いてみますね。

山田花子さんと鈴木一郎さんが法律上の結婚をしたとします。スウェーデンでは、住民登録関係は地方税務署に届け出ます。その時に、どんな苗字を選びますかと聞かれるのだそうです。利用できるパターンとしては、

(スウェーデン流に名・姓の順で書きます)
1 花子 山田(旧姓のまま)
2 花子 鈴木(配偶者の姓)
3 花子 山田-鈴木(新旧両方の姓)
4 花子 鈴木-山田(3の逆順)
と4パターンも可能だというのです。かつては日本のように2が主流でしたが、今では3などの新旧の2つの姓を名乗るのが多いのだとか。実はこれは夫も同様で、4つから選べるのだそうです。男性の場合には一般的には1の旧姓のままが多いですが、妻の苗字が素敵だったりするとその苗字を名乗ったりするのだとか。選択肢が多いのですね。

ちなみに、スウェーデンでは離婚も多いのですが、その場合には旧姓に戻す場合が多いそうです。

でも、法律婚が少ないのは事実で、職場を見回しても子供がいて、パートナーがいてもサンボの人が多いです。う~ん、この辺の感覚がスウェーデンなのですね、きっと。

ではまた。

投稿: kinta | 2007年12月19日 (水) 15時15分

4種類の苗字・名前ですか!結婚したら配偶者の名前になることが当たり前(私は女性なので)のように感じていた私にとって、すごく新鮮です。「夫婦別姓」より、個性的に感じます。
子どもがいてもサムボのままというのは、やはり結婚する必要がないからなのでしょうか。日本では婚外子に対しての偏見が強いですもんね。それに離婚についても、マイナスとして見られることが多いですよね。戸籍が家族単位になっている国は、ごくわずかと聞きます。個人単位にしたらどんな感じなのかなー・・・と想像もできないくらい制度が染み付いてしまってるんですケドね(笑)

投稿: maro | 2007年12月24日 (月) 17時07分

maroさま

戸籍が家族単位の国って調べたことないのですが、日本とかアジアとかだけなのでしょうかね。やはり、家族観とも関係しているのでしょうか?

どなたか、戸籍制度に詳しい方~。知っていたら教えてください~。

では。

投稿: kinta | 2007年12月26日 (水) 14時48分

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